since2000.7
Contents
Home
BBS
革命講座
Concepts
Links
Mail
トップへ戻る(homeへはタイトルをクリックしてください)

2002/08/09 (金)

2002/08/09 (金)

痴漢に間違われたら
 昨日は友人とひさしぶりに飲み会を開いたのであるが、恐ろしい話を聞いた。
 「訳のわからない間に痴漢と間違われ、警察署にまで連行された」という話である。


 痴漢撲滅キャンペーンなどの行われた96年頃から、痴漢行為をされたら、女性や周りの人間は積極的に痴漢を捕まえて警察に突き出すべきであるとの認識が一般化された。
 それはそれで好ましいことであろう。痴漢はれっきとした犯罪行為であり、これが本当であるならば、強制わいせつ罪以外の何者でもないからである。痴漢が微罪であるという認識は改められなければならない。


 しかし、それと同時に、「痴漢行為など働いていないのに、痴漢とされて、起訴された」などのえん罪事件が起こるようになったようである。いくつか報道はされているが、タイトルリンクの長崎事件の被告人などはいまだ冤罪を主張して戦っている有名な例である。
 痴漢と間違われて、逮捕勾留などされれば、通常は出社できなくなるため事情が周囲に知られることになる。裁判の結果如何に関わらず何年も待ってくれる会社などないため、通常は失職することになるだろう。
 近所の人たちにも程なく事情は知られ、名誉権の侵害まで受けることになる。これは、もし冤罪だとすれば、彼の人生が(語弊はあるが)女性のうかつな告発により不当に奪われたことになる。


 話を戻そう。
 その友人の話は珍しいものであった。
 友人が電車を乗り換えるためホームに立っていると、突然腕をつかむ見知らぬ女性がいたらしい。
 「何でしょう?」と聞くと、すごい勢いでにらんでいる。
 「さっきの電車でずっと痴漢をしていたでしょう。」
 などというようなことを言われて、延々と騒がれたらしいのだ。

 もちろん、友人は心当たりもなく、そんなことはやっていないと言うしかない。
 人垣ができ、駅員がやってきて、とりあえず駅の中の執務室へ連れて行かれたらしい。

 そうしたら、まもなく警察がやってきたという。そして、抗議の間もなく、両脇を警官で固められて、改札に横付けされた赤色灯をまわしたパトカーへと連れて行かれたという。

 警察署では夜遅くまで延々と弁解をさせられ、結局、被害女性が告訴をしないということで、終電間際に解放されたと言っていた。痴漢がしていたというサングラスが彼の荷物から発見できなかったことも幸いしたと言っていた。


 よく、痴漢と間違われないために混雑した車内では腕をあげておくなどの話があるが、こういった、あとから女性に捕まってしまった例では、相手が勘違いしている以上、どうしようもない。
 しかも、物証などなく、被害女性の言葉だけで、ここまでされてしまうというのは、どう考えてもおかしな話である。

 こういった場合にどうすればいいのかというのはWebの上でも興味のあるトピックらしく、
http://www.f2.dion.ne.jp/~nakajt08/diary/02_04/chikan.htm
など、「当番弁護士を呼んでくれと言って黙秘」とか書いてあるページをよく見かけるが、それは法律的にも実際的にも間違いであろう。
 まず、逮捕の時点はあとから警察がどうにでも動かせる場合が多く、私人逮捕であることを前提とした主張はその場では無力である。
 また、警官に逆らうことは、公務執行妨害などの罪を作ることになりがちであり、得策とは言い難い。結局逮捕勾留されてしまえば被害をうけるのは同じだからである。

 http://www.hou-nattoku.com/manwoman/other1.htm
 ここには痴漢とまちがわれると一般にどうなるのか、どうすべきかが短く書いてある。
 しかし、実際のところ、警察署まで連れて行かれた時点では友人のようにうまくいって、一言のわびもなく釈放されるのがいいところである。衆人環視の中、痴漢呼ばわりされたことの被害や、その日一日の時間は戻ってこない。もちろん、相手の女性にもあやまらせることなど絶対にできない。

 理想を言えば、友人は女性に手を捕まれた時点で、彼女を無視して、あるいはふりほどいてでも、通常通り家に帰るべきであった。もちろん女性は追ってくるかもしれないが、もう逃げるしかない。
 駅員室にいってしまえば、もはや警察署に行くことはさけられないからである。警官が来て、話を聞いて返してくれることは絶対にないといえるであろう。自分が犯罪をやっていないということは証明できないし(やっていないというにはすべての可能性がないことを証言しなければならないから、それは不可能な「悪魔の証明」である。)、女性の言うことを信用して事態が進展しているのであるから、だれも自分の言うことを信用してくれるとは思わない方がよい。

 運悪く逃げられなかった場合には、警察には全面的に協力するしかない。しかし、絶対に事実しかしゃべらないことだ(黙秘は普通の人間にはできないといわれているので)。下手に警察と敵対することは、特段よい結果は生まない。法律はここでは無力である。

 結局のところ、これを書いていても良い考えは浮かばなかった。

 本来であれば、すりなら現行犯でしかつかまえない様なところを、不確実な女性の証言だけで捕まえてしまっているところに問題がある。警察の方には未だ、痴漢を「重罪」としてとらえる意識がないからである。
 しかし、社会的には「重罪」として、様々な不利益をうけるのであるから、まず、警察の意識の改革が第一歩だろう。
 そのように考えると、痴漢の跋扈を許すのではないかという指摘もあろうが、冤罪を生むよりはましである。
 スリ専門の刑事がするような地道な裏取りの捜査を、痴漢の場合にも行うという、捜査技術の進歩でこれは解決されるべき問題である。

 ようするに重罪を軽く扱う警察・検察・裁判所が悪いのである。実はたかが痴漢の偏見から抜けていないのは、これら刑事司法機関を担う男性なのだ。